「へえ〜、この人お酒飲めないの?」
酒豪のような顔をして実は丸っきりの下戸だという人がいる。その反対に見るからに優男風な人が大酒飲みで有ったりするからわからない。最近は女性でもお酒の強い人は少なくないから、顔や性別だけでは判断出来ない。同じように趣味も外見からだけは判断出来ない。
以前付き合っていた人は凡そ手芸とは縁の無い顔をしていたが、どうしてどうしてなかなか達者で有った。また同じ町内に住むSさんは知り合いになる前はまさかジャズやオーディオが趣味だとは思わなかった。その他この方は油絵もお描きになるし、大工仕事、造園もやる。外見からはこんなに活動家だとは全然見えない。
かく言う私もジャズを聴いているというと大抵怪訝な顔をされる。どう見てもジャズを聴く顔では無いらしい。(じゃあ何を聴く顔に見えるのだ?)また最近始めたキノコ採りも余り信用されてない。そもそも私はあまり活動的に見えないみたいだ。まあ無理も無い。本人自身が意外と思っている位なのだから。(何じゃ、そりゃあ)私はどちらかというと家で寝っ転がっておとなしく本か何かを読んでいるタイプなのだ。いつからこんな風になってしまったんだろ?自分でもようわからん。(だったら他人が分る訳ねーじゃねーか)
コミュニティセンターの秋の文化祭や市展などに行ってみると意外な人の名前を見ることが有る。
「えっ、あの人こんな趣味があったの?」
とか
「へーえ、この人書道なんてやっていたんだ。」
と驚くことがある。
今となっては大分昔の話になるが、久し振りに市展へ行ってみると聞いた様な名前をそこに見つけた。
「あれ、ひょっとするとこれ近所のスナックのママの名前じゃ無かったっけ?」
日本画の大作の前にたたずみ、私ははてなと思った。翌年も彼女の作品は有った。有る時お店に行くと嘗て市展に出した作品が飾ってあった。
「ああ、やっぱり。」
他人を職業や見かけだけで判断してはいけないと熟々思ったのはこの時だった。
最近ではこの逆で嘗てはこの人凄いんだなあ、と思っていた人が実は大したことなかったと言う事があった。彼のホラ話にうまうまと乗せられた訳ですな。それにしてもホント人は見かけに依らないものですね。