姉から携帯に着信があったのでかけてみると、私が商売をしていた時の取引先のご主人Ｈさんが亡くなられたとのこと。以前脳梗塞を患い、自宅療養していたのは知ってはいたが、その後は経過も良好そうだったし、仕事を引き継いでいる息子さんに以前お会いした時も別にそれほど容態の悪いことはお聞きしていなかったので安心していたのだ。葬儀には間に合わなかったものの、知らせを聞いて今日ご自宅に伺い、お焼香をあげさせて戴いた。
奥様の話によるとなんでも腸捻転を2度患ってから、体調が思わしくなく、耐久力が無くなったとのこと。長生きの家系だったのに残念だ。故人は銅の鋳金作家で彼の地は鋳金工芸家を多く輩出したところであるが、今ではちゃんと全工程を経て作品を仕上げるのは故人の家だけになってしまった。それほど伝統工芸というのは儲からない商売なのである。
幸い息子さん夫妻が一所懸命やっているのが救いである。ただそうは言っても工芸品はそんなに売れるものではない。息子さんは若いだけに色々展示会やらメディアを利用して販路拡大に懸命である。
それにしても現代は様々なものが氾濫しているだけに、好みも多様化して、こう言った伝統工芸品の良さがあまり知られなくなったのは残念だ。私も好きなだけに懐が許せば色々と買ってあげたいところだが、年金暮らしではね。
Ｈさんのところの作品はうちには先々代の時からかなり有る。そんなに高価なものはないが、親父殿と私が好きで買わせて戴いたものだ。今、その作品を見ると在りし日のＨさんの姿が瞼の裏に浮かんでくる。今はただご冥福を祈るのみです。合掌。
