すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

地元鋳物工芸士の個展

 柏崎市の伝統工芸の担い手である蠟型鋳金工芸士の原さんの個展が地元の酒蔵で開かれた。案内の葉書を戴いていたので、訪れてみた。「越の誉」を醸造している原酒造さんとは初めてのコラボだ。

 

 同じ原姓だが、原酒造さんの屋号は「鍋屋」。どうも先祖は工芸士の原さんと同じく鋳物屋さんだったらしい。地元の信用金庫理事長さんの紹介により、コラボレーションが実現したらしい。もう柏崎でこの伝統の蠟型鋳金を原型から完成まで一貫して作るのは多分ここだけになってしまったと思う。それだけに絶えて欲しくない技術だ。

 

 原さんの作品には必ず「青雲」の名が入るが、5代目原惣右衛門を名乗っている。原惣右衛門というと赤穂義士にも同名の人がいるが、この人とは関係があるかどうかは分かりません。(笑)原さんは以前私が仕事をしていた時の取引先であったし、その後も何やかやで親しくお付き合いさせて戴いている。

 

 先代までは高級な花瓶、茶釜、置物なども作っていたが、どちらかと言うと大衆向きに安価な作品を数多く作っていた。とは言え高岡の銅製品に比べれば大量生産向きではなく、それなりに手間も掛かっているので、決して安かろう、悪かろうというレベルの物とは違っていた。

 

 しかし最早それらは一般受けしなくなって来ていたし、たまに記念品や祝い品に会社や学校など団体が注文するくらいになっていた。しかしこれではこれだけ手間の掛かる仕事なのにそれだけではやっていけない。作品を見ただけでは、どれほど大変な作業かが分かって貰えない。型を取ったり、銅を溶かし、型に流し込んだりと中々危険も伴う作業なのだ。そしてスが出来たりする事もあるので、吹いた物が全て上手く行くとは限らない。失敗作も出来る事も少なくない。

 

 一口に伝統工芸と言ってもそれを仕事にしてやって行くのは容易ではない事なのだ。これは作品をより付加価値のある物とし、自らを職人と言うより芸術家の域にまで高めねばならない。そう言う訳で原さんは先代から仕事を引き継いでから、ずっと試行錯誤しながら新しい造形デザインなどを模索してきた。

 

 そしてその中で腕は磨かれ、従来の花瓶などにとどまらず、アクセサリー、オブジェなどに新しいデザインを考えながら制作してきた。この度は地元の酒造会社さんとのコラボと言う事も有って、酒器などの作品も新たに登場している。原さんはご夫婦とも作品作りに協力し合い、積極的に東京や海外にもPRしている。それがまた地元だけに留まらず、日本の伝統工芸を世界に発信することになり、世界各地で販路を広げるきっかけになっている。

 

 伝統工芸と言えど、従来と同じ事をやっていたのでは、やがて廃れ、滅びて行くだけになりかねない。お二人の積極的な業務展開に心から成功を祈るばかりだ。

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展示会に先立ってレセプションが行われました。

 

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次いで原さんによるスライドでの仕事現場の説明です。

 

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蠟型による製品は原型の蠟が溶けてしまうため、一つの型で一つの製品しか出来ないので、それだけ価値がある。これは壁掛けの一輪挿し。

 

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従来作ってきた一輪挿しとは少しフォルムを変え、仕上げも一層丁寧になった。

 

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伝統の大久保鋳物は斑紫銅と呼ばれ、仕上げにまた銅器を焼き上げる時、炎の模様がついて独特の模様となる。使い込めば使い込むほどにその模様が味わい深くなる。

 

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えー、後方のお尻を見ないで、ちゃんと銅器の方を見て下さいね。(笑)

 

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磨き込まれた表面と斑模様、花器の優雅な曲線が織りなして美しい。えー、どこぞの展示会で金賞を戴いた作品です。

 

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海外で展示した作品です。新しいデザインにも果敢に挑戦しています。

 

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近年はアクセサリー類も制作して若い人達に好評のようです。

 

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独特の形をした花器。上から見たところです。

 

まだお若いお二人。是非地元の伝統工芸を世界に広めて欲しいものだ。