すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

オラは死んじまっただー(2度目の鹿島槍ヶ岳登山)その1

 家庭教師をやっていた時の教え子Nさんとお互いのブログを見つけた事から、そのうち一緒に山に行こうという事になり、この度実現の運びとなった。彼は私より8歳年下で、来年還暦を迎える。しかし彼は長岡の勤労者山岳会に所属しており、毎月の様に山へ行っている。対して私は今年は3月以降全然山へ行ってない。しかも所属するランニング・クラブの笹が峰練習会で9k歩いただけで、翌日は筋肉痛になった。不安だべ。(笑)

 

 今回のお山は鹿島槍ヶ岳後立山連峰の盟主とでも言う山だ。実はこの山は14年前にも登っていて、その時は日帰りで行って来た。登山口の扇沢から登り、途中の爺ヶ岳南峰、中央峰、布引岳、を経由して、5時間で鹿島槍ヶ岳の頂上に立った。ついでに北峰も制覇して11時に帰路につき、3時半頃には扇沢に下山している。今から考えると驚異的なペースで田中陽希並みだ。まあ、あの頃はまだ若かったし、走ってもいたからなあ。それに比べると今はな~んにもやってない。でも5年前にも登っているし、ま、何とかなるだろうと言う気持ちは有った。

 

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駐車場に何とか車を駐め、登山届けを出して、いざ出発じゃあ。

 

 登山口の扇沢を8時50分に出発。今回は冷池山荘に泊まるから、種池山荘辺りか爺ヶ岳南峰辺りでお昼になるかと考えていた。しかし歩き出すと直ぐに汗が噴き出した。今日も暑くなる様だし、こんな遅い時間帯から登った事は無かったので、些か調子が狂ったのかも知れない。教え子の前でいい所を見せようという気は無かったのだが、久し振りに自分のペースで歩けると思い、少しペースが上がったのかも?

 

 だいぶ呼吸が荒くなったので、30分ほど歩いた所で休憩し、Nさんにもうちょっとペースを落とすと願い出る。14年前は種池山荘までノン・ストップで歩いたのに、我ながら情けない。

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樹林の間から眼下の黒部第4ダムの入り口となる扇沢ターミナルと針ノ木岳方面が見える。

 

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夏の花の盛りは終わったかも知れないが、それでも色んな花が目を楽しませてくれる。

これはギボウシ

 

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岩小屋沢岳方面と扇沢。沢にはまだ雪渓が残る。14年前はここでスキーを楽しんでいる人に出会って、驚いたものだ。

 

ペースを落としてからは比較的楽になったが、歩くのが遅くなったなと、熟々感じた。やがて「一枚岩」と書かれた標識のちょっと前に、突然右膝やや上左内側辺りに痙攣が来た。「あ、何で?」と思ったが、そのまま歩いて一枚岩の看板の所でどうにも我慢出来なくなった。まだ柏原新道の中間地点で有る。果たしてこの先の長丁場を冷池山荘まで歩いて行けるのか? とにかくNさんには種池山荘で待っていてくれとお願いして、先に行って貰った。

 

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ここで右足が痙攣して動けなくなる。無理をして歩いたら、今度は左足まで痙攣してきた。やばいべー。ど、どないひょ?

 

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ただ一つだけ残っていたエンレイソウ

 

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ハクサンフウロ。足が痙攣していても、しっかりお花の写真は撮るんでゲスよ。

 

 歩いたり休んだりしながら前進する。「石畳」「石ベンチ」「ガラ場」「富士見坂」「鉄砲坂」の地点を通過して、種池山荘までもうちょっとの所まで来た。途中で団体で登っているメンバーの有る女性の方が、寝転んでいる私を見かねて、痙攣止めの漢方薬を恵んでくれた。たぶん津村の「コムラケア」みたいな物だと思うが。この時はその女性の方が観音様の様に見えた。(涙)

 

ハア~、や、やっと着いた。と言ってもまだ種池山荘だけど。到着時刻13時50分。何とここまでで5時間も掛かってる~。14年前なら、もう鹿島槍ヶ岳の頂上に立っているぜ。落ちぶれた物よのう。(落涙)Nさん、さぞかしろくろっ首になった事でしょう。(笑)もうNさんはとっくに昼食を済ませていて私を待っていてくれた。冷池山荘には午後3時までに入りたかったが、少し遅れそうだ。止むを得ない。Nさんに先に行って貰って宿で手続きしてくれる様頼んだ。Nさんは無理をしないで引き返しませんかと言ってくれたが、折角私が誘って、Nさんは楽しみにしていたのに、素晴らしい風景を拝まずして撤退は私としても心残りだ。何としても冷池山荘には辿り着きたい。この好天を無駄にしたくない。明後日からは雨になる。

 

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やっと辿り着いた種池山荘。後に爺ヶ岳南峰が聳える。

 

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時折ガスが掛かり、その姿を現したり、消したりの爺ヶ岳南峰だが、普段なら30分で登れるんだが、この体たらくでは1時間以上掛かりそう。

 

 急いで昼食を摂り、爺ヶ岳へ向かう。今迄山で痙攣した経験は無いので、果たして行けるかどうかは分からないが、冷池山荘で一泊して休めば、明日は回復するかも知れないと言う一縷の望みで、カタツムリの如く前進する。しかし、そうは言っても痙攣は益々酷くなり、歩いたり、直ぐに休んだりを繰り返す有様になった。

 

 と、そこへ一人の若い男性が(と言っても私に比べればだが)通りかかり、私に大丈夫ですかと話しかけてきた。足が痙攣して動けませんと言うと、どちらまで今日は行くのかと尋ねてきた。冷池山荘までだと答えると、今日は汗をかきましたかと訊かれた。最初に私としてはもの凄く汗をかいたと答えたら、

 「ああ、それは塩分が出たから、足がつったんです。え、誰かから漢方薬を貰って飲んでも効かない?じゃあ、これがいいですよ。」

彼はそう言って私に錠剤を3粒ほどくれた。カリウムみたいなものだそうで、飲めば直ぐに効いてくるとの事。有り難や、この時私には彼が皮を剥かれて丸裸になっているウサギを見かねて、手を差し伸べてくれた大黒様の様に見えた。山男はとっても親切なのです。でも私もこれに懲りてこれからは、足がつった時の用意をしていなければならないなと痛感した。

 

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種池山荘から少し行った所ではお花が咲き乱れていた。残念ながらチングルマやコバイケソウは終わっていたが、ハクサンフウロヤマハハコ、この黄色い花(何だろうな?)がまだ有った。

 

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岩場地帯に来ると俄然このトウヤクリンドウが出始める。

 

 薬を戴いたお陰か、それまでよりか幾分増しになって、何とか歩き続けられた。しかし最早爺ヶ岳山頂を目指す気力も時間も無い。どうせ爺ヶ岳へは何度も来ているので未練は無い。山頂を迂回する道を選び、そのまま冷池山荘を目指す。もう山小屋に入る予定の午後3時を回っていた。

 

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爺ヶ岳山頂へは行かなくて、そのまま冷池山荘を目指す。漸く下りになったので、幾分か歩くに楽になった。振り返ると爺ヶ岳南峰の堂々とした姿が迫力だ。

 

 冷他山荘への道は基本は下りなのだが、それでも幾分かのアップダウンは有る。その度に私の歩みは遅くなる。周りはガスに包まれてはいるが方角は分かる。ひたすら山荘へ向かう。

 

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爺ヶ岳は三つの頂が有るが、どうも北峰へ行く道がない様だ。これは中央峰。爺ヶ岳最高点の有る処だ。カップルが下りてくるのが見える。

 

 やっと冷池乗越しに来た。ここは赤岩尾根へ下る道と爺ヶ岳へ向かう道、更に冷池山荘や鹿島槍ヶ岳を目指す道の分岐点である。晴れていればここからも立山剱岳の雄姿が見えるはずなのだが・・・・。

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やっと冷池乗越しに着く。山荘へはもうちょいなのだが・・・・・。見えてて中々辿り着かない。

 

 その先を歩いていると、2.3人のグループに出逢う。下から上がってきた様だ。山荘は後どれ位かと尋ねるとほんのもうチョイ先だと言う。それを聞くと幾分元気が出た。だがいつもの達者な時と今日の様な与太っている時の足取りとでは比べものにならない。私はこの先30分以上も歩く羽目になるのだった。

 

 漸く山荘手前の道まで来た。だがそこから山荘までが登りになっていて、足が疲れ切っている私は中々そこを登るのが容易ではない。何度も休み休みして、やっとの思いで山荘玄関へ転げ込んだ。時刻は丁度午後5時。今しも夕暮れになろうかと行く時刻で有る。そして事実夕食の第1回目が始まらんとしていた。Nさんは義理堅く玄関ホールで私を待っていてくれた。疲労で声も碌に出ない有様だったが、何とか宿泊の手続きをして部屋へ案内して貰った。

 

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部屋の窓からは今渡って来た山並みが見える。それにしても吊った足で、よくぞここまで辿り着いたものだ。

 

 大して休憩もしないうちに午後6時からの夕飯となる。散々歩いてきて疲れていたので、正直余り食欲は感じなかったが、腹へ詰め込んでおかなければ、明日が持たない。いつもだったらゆっくり景色を眺めながら、生ビールなど飲んでいたんだけどねえ・・・・。

 

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余り美味しそうには見えない夕食だけど、そんな事は言っておれぬ。明日のためのエネルギーを蓄えておかねば。ただテーブルとテーブルの間が狭いのには参った。後の方と時折背中がぶつかり合うほどだった。

 

 夕飯後、山荘前の展望台に出た。日中はガスに覆われ、姿を見せなかった鹿島槍ヶ岳の荒々しい巨体が、夕闇が迫る中、姿を見せていた。

 

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夕日を背後から浴びて聳え立つ鹿島槍ヶ岳。左手前のピークは布引岳、中央のピークが鹿島槍ヶ岳南峰、そして一番右のピークが北峰で有る。明日は果たしてここを目指せるか?

 

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山荘前展望台と冷池山荘正面。この山荘は大きくて250人を収容出来る。

 

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我々が泊まった部屋。8人部屋だが、幸いこの日は6人しか宿泊しなかった。ラッキー!でもそのうちの一人が大イビキで、うるさくて碌に眠れなかった。アンラッキー!

 

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夕刻になるとそれまで雲に包まれていた立山剱岳がシルエットながら、姿を現した。明日の期待も膨らむという物だ。

 

 疲れていたから直ぐに眠りに落ちるだろうと思っていたら、然に非ず。疲れすぎていて、中々寝付けない。特に足の疲労が酷いせいか、はたまたお隣で寝ている人のイビキがうるさいせいかは分からないが、足を揉み揉みしながら、横になっていたら、何とか少しは眠れた様だ。明日はちゃんと歩けるといいのだが・・・・・。