朝Ｋさんが電話をしてきて
「今日、日曜美術館で山岳写真をやっているから見てみたら？ あ、それから今日、家にいる？」
と訊くから、ウン一応いるけどと応えると
「じゃあ、後で遊びに行くから」
と言うので、何処へも行かずに待っていた。しかし待てど暮らせど彼はやってこない。あの男の「後で」は一体何時の事なんじゃ？
やがてお昼になったのにやって来ない。ひょっとしてお昼間際に来て一緒に何処かへ食べに行こうという段取りかと思ったが、結局それも無かった。では午後から来るのか。それならそうと最初からそう言えばいいのに、「後で」なんて言うものだから、電話をくれた後、程なく来ると思ったじゃないか。
午後2時になった。それでも彼はやって来ない。さては彼奴はまた昼寝しておるんかいな。しょうもない奴ちゃ。ふん、こうなったらこちらは電話なんかしないもんね。向こうから遊びに来ると言っておきながら、人を待たせて昼寝とは太え奴だ。
やがて午後3時になった。来ない。さてはまたきっとパチンコだな。呆れた奴だ。こうなりゃこっちもお昼寝だい。マッサージ機に掛かりながらスヤスヤと眠りに落ちる。
ん？ 予定通り眠ったみたいだな。どれ眠気覚ましにコーヒーでも飲むか。と、その時「ピンポ〜ン」。あ、今頃来おってからに。
「コーリャ、君は一体今何時だと思ってるんだね。人が何処へも行かずに待っていたというのに。君の「後で」は7時間後か？ どうせまたパチンコだろ」
「そうだよ。最近パチンコ屋に貢いでおったから回収して来ねばならないんじゃ。」
「こんなに人を待たせていいと思っているのか？」
「いや、だからそれは些か申し訳ないと思っているから、こうして手土産持参してきてるではないか。」
「大方パチンコの戦利品だろ？」
「何を！ この痴れ者め。これは我が輩がこの間東京へ美術展を見に行った折、買ってきた物じゃ。見かけは小さくとも結構値段は張るのだ。」
「ナヌ、そうか。ふ〜む、東京土産持参なら、ボクちゃん許しちゃおうかな。」（とことん賄賂に弱い奴！）
その後東京での話や写真の話などしたり、マッサージ機に掛かったりして、Ｋさんは帰って行った。あのね、この程度の話だったら、先にとっととこっちへ来て用事を済ませ、それからゆっくりパチンコへ行ったらどうなの？この次「後で遊びに行く」と言ったら、「今じゃなきゃダメ」と言わなくちゃ。この男は人を呼び付ける時は「あと10秒で来い」なんていうくせに、自分は至極時間にルースだ。教育し直せねばならんな。
