縁

　この歳になると最近熟々思うのは「人の縁」についての事だ。人の縁と言っても仕事の縁、趣味の縁、同級生の縁、ご近所の縁など様々だが、私の年齢だと趣味の縁がどうしても強くなる。実際今お付き合いしている人達は皆その筋（禁誤解！）の関係ばかりだ。

　分けても日常的にはオーディオ関係の友人達とお付き合いが多くなってきている。その方達とは昔からお付き合いしていた訳では無かったのに、今では紹介してくれた人よりも付き合いが深くなってしまったから不思議な物だ。例えば最近ではターサン。この方は出入り業者のマーさんや青色申告会青年部時代に知り合ったMさんを通じてだったが、今ではお互いに頻繁に交流する仲になっている。

それから茨城のフーさん。この方は亡くなったＮさんを通じてだったが、こんなに行き来するようになるとは当時思わなかった。元々我が家の出入り業者だったコーさんがNさんを紹介してくれて、更にＮさんがフーさんを紹介してくれた形だ。そのフーさんが今では一番のオーディ仲間となっている。

　その元々の発端のコーさんは地元の「ジャズライヴを聴く会」という組織の立ち上げが無かったら、当時同じ町内に住んでいながら知り合う事は無かったのだ。その会をＩさんやＨさんが立ち上げようと声を我々に掛けなかったら、フーさんに出会う事は無かっただろう。だがそのコーさんとはただ今疎遠であり、Ｎさんとはもう決して再開出来ない形になってしまったから、縁とは不思議な物だ。

　我が家のオーディオ顧問ヨーさんについても同じような事が言える。我が家の簡易保険の集金に来られていたＳさんという方がいた。我がオヤジ殿が私の事を

「あの子は親孝行だし、仕事が終われば家庭教師を引き受けてやっている感心な子なんだけど、オーディオとか何とやらに現（うつつ）を抜かして、未だに嫁を貰わない。困ったもんですて」

とこぼした事から始まる。Ｓさんは私の留守に家人に頼み込み、私のオーディオ装置を見ていったらしい。そして後日私に倅の勉強を見て欲しいと頼みに来る。

で、彼の息子さんを教える事になるのだが、勉強を教えている時間よりもその親父さんとジャズやオーディオの話をしている方が長いくらいだったので、何しに彼の家へ行ってるのか分からないくらいだった。その件（くだり）は以前もこの欄で書いたと思う。

　で、そのうちＳさんが面白い人を見つけてきたよ。あなたの事も紹介しておいたから、今度行ってみたら？　と紹介されたのがヨーさんだったのだ。だからヨーさんとの付き合いも三十数年になる。その紹介してくれたＳさんは今ではゴルフ練習場を始めた事も有って、オーディオとは疎遠になり、私とも滅多に会わなくなってしまった。一方紹介して貰ったヨーさんとは頻繁に行き来している。誠に人の縁とは不思議な物だ。

　オーディオの世界は意外と狭いので、何れはお互いに出会う事になるのかも知れないが、遠回りをする事だけは確かだ。だからほんのちょっとした縁でも、それが後で振り返ってみると、もの凄く大事な縁を取り持った事に気づいて、しみじみと「縁」の有り難さを感じる。

　折角出来た縁を無駄にする人もいる。縁を繋いでくれようと腐心する人の気持ちを分からない人もいる。だが私は縁を大事にしたい。独身なだけに尚更だ。有難くも最近はどんどんこの縁が増えてきているように思う。尤も「円」とはどうも縁が無いようなのが困りますが。(笑)　へい、ご退屈様。