食品棚を整理していたら、あ～れ～、見た事が有るような物が･･･。あ、これ確か5，6年前に食べたパスタじゃねーの？ これ、商売をしていた時にお中元かお歳暮に取引先から戴いた物で6本くらい有ったんだっけ。もうみんな食べたと思っていたのに、まだ残っていたとは。
おお、まだあの時のパスタが残っていたとは！
うー、あの時も確か賞味期限切れだったけど、乾燥食品だから大丈夫だろうと思って食べたんだっけ。（オイオイ、危ねえな）まあ、これだって大丈夫だろう。あれからまだ５，６年しかたってないんだから。（だから危ないって言ってんだろ）どれ、一体賞味期限は何時だったんだ？ 2,006年11月か。賞味期限がそれだから、製造されたのはもっと前って事になるな。するってえと15年以上前のパスタか。（益々危ねえな）
15年以上も前に製造されたパスタ。果たして食えるか？
そうだ。今日のお昼は喰うもんが無かったんだ。コイツを一つ食べてみるとするか。（だ、大丈夫？）
「ウーさん、今日のお昼はパスタだからね。楽しみにしててね。」
私は偶々遊びに来ていた常連客のウーさんにそう言った。
「何せ15年以上も前のパスタだから貴重だよ。」（そんなもん、貴重でも何でもねえ！）
「エー、やだ。そんなもん食べさせるの？ 私の胃袋デリケートだから、そんなもん食べたらゲーリー・クーパーになってしまう。私、自分でパン持ってきているから、それ食べる。」
「まあまあ、落ち着いて。（落ち着いてなんかいられるか）大丈夫だよ。だってほら、前にもこのパスタ食べて大丈夫だったじゃない？ 乾燥物だから全然問題ない。（問題あるよぉ）10年過ぎても大丈夫だったんだから、たぶん15年でも同じだよ。」（酷い理屈！）
もうお昼が近かったんで、早速準備に取りかかる。具材はタマネギにニンジン、ピーマン、挽肉が無いので、ウインナーとアサリを入れる。まあ、これだけ入れりゃあ、お店のパスタなんかより遙かに豪華だ。どっちかっつーとパスタより具材で腹一杯になるな、うん。残すと悪いからパスタはあんまり沢山茹でないようにしよう。
「アタシの分はパスタが入って無くていいからね。」
とウーさんが言う。何の何の。遠慮しなくていいんだから。（遠慮するよ）え、今度すかんぴんちで食べ物を出されたら用心しなけりゃならんとな？ひょっとして3,000年も前の食品がでて来るってか。アホか！ そんな古代エジプトみたいな時代の物が我が家に有る訳ねーだろ。
よし、出けた、出けた。これにミートソースを掛けてと。え、ミートソースも15年物かだと？ バカ言わっしゃい。この前買ったばかりだよ。流石にこれは乾燥食品で無いから、オイラだってそんな物は食べんよ。（イヤイヤ、分からんぞ。――コラーッ！）ハイ、ウーさん、お待ちかねー。
「え、アタシの分、パスタ入ってるの？ 大丈夫かなあ。パスタ少しにしてね。アタシ、旦那も子供もいるんだから、まだ死ねないの。」
「まだそんな事言ってるの。いい加減覚悟しろ。」（ヒドイ！）
こうして食べ始めたが、これが中々いける。特にアサリが効いていて、ミートソースと良く合っている。あれ程用心していたウーさんも美味しいと言っている。そうでしょう。何せ15年物の熟成品だから、まろやかな味と香りが楽しめるんだよ。（乾燥食品に熟成なんて有る訳ねーだろ。ウイスキーじゃ有るまいし）
「ほーれ、見い。だから言ったでしょ。乾燥物に賞味期限は無いって。（ホントかよ）それにこれ一応密封してあったでしょ。大丈夫に決まってるじゃない。活きの悪い魚やキノコよりよっぽど安全だよ。」
と私は結果オーライだったくせに、変に自信満々で自説を語るのだった。大体やねえ。食べ物を粗末にするのはいかんよ、キミい。（いままでほったらかしにしてきたくせに、何を言うか）さーて、今度は何を発掘してくれようかな。あ、そうだ、2年前にくさやの干物を貰っていたっけ。あれ確かまだ食べてなかったな。どこにしまったっけ？ 今度はそれだな、うん。（もう、止めてくれー）
