すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

オートグラフ

 ジャズを聴く我が家にはあるまじきスピーカーがある。それはタンノイのオートグラフだ。クラシックを聴く方には往事は憧れのスピーカーだった。しかし私は評論家先生はじめ好事家達が褒めそやすこのスピーカーの音をそれまで良いと思ったことは一度も無かった。

 

 と言うのは何処のお店で鳴っていてもぼやけたような音しか出ていなかったからである。一体これの何処が名器なんだと思ったもので有る。尤も私が聴いたオートグラフも悪かった。後期のモニターゴールドや、HPD385のユニットだったのである。恐らくモニターレッドやモニターシルバーなどのユニットであればまた違った印象だったのかも知れない。

 

 しかしぼやけた音は兎も角、ホールトーンなどは上手く雰囲気を出していたので鳴らしようによっては化けるかも知れないと考えていた。ある意味その佇まいから憧れが有ったのである。とは言え上手く鳴らなければ大枚はたいて買った所でどうにもならない。只の粗大ゴミである。

 

 そんな有る時茨城のフーさんの所へ行ったら偶然このスピーカーがあった。聞かせて貰うとやはり例のボケーッとした音である。ああ、やはりこのスピーカーはこんな音なんだなと思ったもので有る。実は当時今のシステムになるちょっと前だが何とかしてアルテックのスピーカーで雄大なホールトーンを出したいと思ったのだが、やはりオートグラフのようには上手くゆかない。そこはあの箱の構造、特殊なバックロードホーンに依る所が大であろう。アルテックフロントロードホーンだから直線的な音だ。メリハリも効いていてジャズは良いのだがオーケストラとなると今ひとつだった。

 

 ボケた音にがっかりしていた私にフーさんは

「これはコーン紙が駄目だからだ。レッドのコーン紙に替えればボケないよ」

と言う。ホンマかいなとその時は思ったが翌年また訪れてコーン紙を張り替えたオートグラフの音を聴かせて貰ったら、これがあの時と同じスピーカーかと思ったもので有る。全然違う。あのボケーッとした音には全然ならない。漸くまともなオートグラフの音を聴いたぜと思った。

 

 さあ、そうなると俄然このスピーカーが欲しくなる。何せ憧れていたスピーカーだから。早速商談に及び目出度く格安で我が手に。他にも欲しがっていた方がいたみたいだが、躊躇している間に私がさっさと買ってしまった。その方にとってはまさにトンビに油揚げをさらわれた格好だっただろう。だから決断は早くしなくちゃ駄目なんだよ。(笑)

 

 そうして我が家に輿入れしたオートグラフは今でも私を満足させてくれる。一時は部屋に置けるかどうか心配したが、なに、入れてしまえば後はどうにでもなる。まごまごしていて他人に持って行かれたら何にもならない。正直言って私はオートグラフの後継機ウエストミンスターよりこちらの方が好きなのである。背の高さもオートグラフの方があるし。何よりもモノラル時代に出来たスピーカーというのも良い。

 

 そういう訳で今ではこれを凌ぐクラシック向けのスピーカーは幾らでもあるかも知れないが、気に入って買っただけに浮気はいたしません。はい、クラシックのオーケストラを聴く時はやはりこれに限ります。何だかこれを聴くとホッとするのです。最近は余り鳴らしてないから拗ねているかも知れん。明日辺り久し振りに鳴らすと致しますか。

 

タンノイ「オートグラフ」写真は「オーディオの足跡」の頁からお借りしました。