○桐さんがダイヤトーンのスピーカーとA12を同時に鳴らしたら、ことのほか良い音で鳴ったので、聞きに来てくれないかという。A12はコーン紙の補修も今度はしっかりしたので、ビビらなくなったという。良し、それならばと聞きに行こうとしたが、足が無い。止む無くチャリンコで行こうとしたら、雨が降ってきた。くそっ、こりゃまたタイミングが悪い。
と思っていたら○桐さんが電話してきて
「すかんぴんさんはそう言えば足が無かったんだねえ。悪い、悪い。迎えに行きます」
とわざわざ迎えに来てくれた。遊びに行くのに送迎付きとは何だか悪いなあ。
さて早速聴いてみる。先ずヴォーカルだが、何だか少しもやもやしている。針にゴミが付いているか、新圧が軽いのか、音もビビっている。で、○桐さんは針を掃除したり、カートリッジを変えたりする。幾分か良くなったような気もするが、どうもこの間聴いたような力感と透明感が無い。
○桐さんは次から次へとレコードを変える。私としてはもう少しゆったり聴いていたいのだが・・・・。やがてジャズのレコードになるのだが。どうにも我慢出来なくなった私は
「ダイヤトーンのスピーカーを同時に鳴らしてるんでしょ。確かに高い方はA12を単独で鳴らしているよりも、少し出ているかも知れないが、どうももやついて面白くない。この前はもっと力感があり、スピード感があった。大体フィールドスピーカーと最近の新しいスピーカーとでは音の速さが違う。音の立ち上がりが違う。多分ダイヤ-トーンを同時に鳴らしているから、変な音になっているんだ。試しにダイヤトーンの接続を切り離してごらんよ」
と提言した。
○桐さんはそうかなあという表情でダイヤトーンのスピーカーを外す。すると途端に立ち上がりが良くなり、音がもっと前に出て来て、しかもスッキリ聞こえる。私がそう言うと○桐さんも
「ホントだ。音がスッキリした。こちらの方がいい」
と言ってくれた。試しに最初掛けたヴォーカルのレコードをもう一度掛けてみると、予想通りモヤモヤ感は取れてスッキリした音になっている。これなら十分にレコード音楽の世界に浸れる。
私は○桐さんに音が変わったのを良くなったと勘違いしてはいけないと諭した。高音が少しくらい出るようになっても、それ以上に大事なものを失えば何もならない。今回はお互い良い経験をしたと思っている。独りで聴いていると往々にして間違った方向に進みがちだ。早めに修正してあげられて良かったと胸をなで下ろした。何でもそうだけどやはり経験の積み重ねが大事ですね。