すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

金魚売り

 盛夏になると未だに忘れられない光景が脳裏に蘇る。それはたった1回きりしか見ていなかったように記憶している。だが妙に鮮明に記憶しているのだ。それは夏の風物詩、金魚売りで子供心に感動した思い出だった。金魚売りと言っても市などで売っている金魚屋さんではない。いわゆる棒手振り(ボテフリ)で売りに来る昔ながらの金魚屋さんだ。今や落語の世界でしかお目にかからない(耳にしない)光景だが、私はその時偶然にも出会えたのだ。天秤棒を担ぎ、その両端には色鮮やかな金魚が入った桶が下げられている。この時は確か
 「金魚エ〜、金魚〜!」
とは言ってなかったような気がする。だが桶に入った金魚の何と涼やかで煌びやかなことか。青い空、白い雲、地面に映る影、まばゆく輝く桶の水。それらは夏になると今でも強烈な思い出となって蘇る。おそらく私は自分の頭の中でこの事を何倍にも増幅して更に美しいイメージに仕立て上げているのかも知れぬ。だが夏の暑い日ほんのつかの間見た光景が何故か心に焼き付いている。あの時金魚売りのおじさんに声をかけたかどうかは忘れてしまった。あのおじさんから金魚を買ってあげたかったが、家が貧しかった私はそれが出来なかった。何か非常に悔しい思いをしたものである。
 翌年はその金魚屋さんに出会えなかった。その翌年も見る事は無く、翌々年も・・・・。
時代にそぐわない商いは残って行く事は出来ないのはその時既に感じていた。だがただその年だけの思い出が私を未だに魅了して止まない。