我が家の蓄音機の上には瀬戸物のお犬様が鎮座している。年配の方なら何方でもご存じのようにビクターのマークでお馴染みのニッパー君である。亡くなったご主人様の声が蓄音機のラッパから聞こえてきたのでそれに耳を傾けているのがトレードマークのいわれになったという。
だがこれはビクターのマークと言うより、レコード通の方ならＨＭＶのトレードマークと言うだろう。実際昔のＨＭＶのレコードには皆このワンちゃんが登場していた。ＨＭＶ、すなわちHis Master's Voiceである。いつも客の足をガジガジ噛もうとしていたから、工具のニッパーのように名付けられたとのエピソードがある。
まあ由来なんぞはウキペディアにまかせるとして、我が家のニッパー君は可哀想にも二度の大怪我をしているのである。一度目はかの中越沖地震の時。洋間の飾り棚に置いてあったのだが、落下してパッカーン！見事に割れてしまった。しかしまだ割れ方が良かったので、接着剤で見事に復活した。
以来用心してなるべく高い所には置かないようにしてきた。だから東北大震災の時も無事だったのである。所がそれまで置いていた場所が狭くなり、止む無くテレビ台の上に置く事になった。まあもう大きな地震は来ないだろうと高を括っていた。うむ、確かに大地震は来なかったのだが・・・・・。
ある時テレビ台の後ろに回ってテレビの配線やらオーディオ装置の配線やらを調べていた。何らかの弾みで音が出なくなっていたのだ。この時我が家に来ていたＫさんやＭさんやらのギャラリーが何だかんだとうるさいので、ついうっかりテレビの前に出る時、テレビを跨がず、回転させてしまった。あっ、しまったと思う間もなく、ニッパー君は大画面テレビに弾かれ、テレビ台から落下。今度は木っ端微塵になった。人間はどんなに注意していても間違いを犯す。やはり高い所に置いてはいけなかったのである。
ああ、不憫な奴とオイオイ嘆き悲しむ私を哀れと思ったのか、プラモ作りの名人Ｍさんが何日も大手術をしてくれて何とか蘇った。しかし遠目には良く分からないが、近くで見ると傷跡が痛々しい。うーん、可哀想。今度は大事にしてやるからな。え、そんな事を言いながらまた高い所に置いているじゃないかって？いや、これはそのう・・・・・・場所がないもんでつい。すまん、ニッパー、今度落ちたら命は無いものと思って諦めてくれい！（ヒドイ）
