♪ピンポ〜ン!
(あ、また人が入った時に。クソ、誰だ?)
折角下げたズボンをはき直してトイレから出て外を見てみるとMさんだった。し残した気分ながらも、しょうがないから応対に出た。見ると手に何か持っている。あ、また鶏の唐揚げを買ってきたのね。好きだなあ。でもオイラただいまダイエット中なのよん。
「血糖値が上がったから、摂生をすることに決めて、2,3日前から炭水化物を減らしているんだよ。それなのにこんなの持ってきて困るじゃないか、アアン。」
「肉だったらいいじゃないか。それに急にそんなことを言い出して…・。」
「いやあ、町内会長をやっていたこの3年間だいぶ不摂生をして数値が悪くなったから、反省してまた少し食べるのをを自粛し始めたんだよ。以前摂生していた時はそれなりに数値は良かったんだから。」
「それにしたってそんなに極端にしなくてもいいじゃないの?以前の頃の程度で止めておけば?」
「いや、数値が悪くなったから、以前程度のことでは数値が下がらないんだ。だから今回は頑張らにゃならん。」
「ふ〜ん。」
「あ、そうだ。この唐揚げは貰うから、代わりにここにあるお饅頭を持ってってくれ。姉から貰ったんだけど、どうも目の前にあると誘惑に駆られる。局の女子たちなら、甘いもの好きだからいいだろう。」
こうして目出度く物々交換は成立した。ウチに置いてたって食べられないんじゃ宝の持ち腐れみたいなもんだ。それにしたってオイラだって甘いものは本当は好きなだけに、手塩に掛けて育てた娘を嫁に出したようで、非常に心残りだった。(全く卑しいんだから…。往生際が悪い!)