養生しておいたホンシメジを頃合いは良しと見て採りに行った。さーてどのくらい大きくなっているかな、♪ルン、ルン、ルン♪。えーと、確かこの辺りだったが、フフン、フンフン、楽しみだなー。重ねて置いた落ち葉をどかしてと。あれれ、何だかおかしいな。残しておいた幼菌が無い。そ、そんな馬鹿な。確かに3株ほど残しておいたのに･･･。
でも確かに無い。するとやはり誰かに採られた事になる。うー、ダメだよ、オイラに断りも無しに採っちゃ。（断る必要があるのかい？）そもそもここはオイラが最初に見つけたんだぞ。しかもこの間は全部採らずに養生しておいたのに、後から来て横取りなんて、ゆ、許せーん。盗人みたい事して恥ずかしくないのか？（そう言うのを勝手な理屈というのだよ）クッソー、あー、腹が立つ。
うむ、きっとこの間オイラたちが採るのを遠くからこっそりと見ている奴がいたに違いない。それとも急激に大きくなって隠しておいたのが見えるようになったのかも知れん。何しろここは道端だから、誰にでも見つかる危険性は大いにある。
しかしあれをホンシメジと見破れる人が何人いるだろうか。大抵怪しいキノコと思って蹴飛ばすに違いない。そうだ、ひょっとしたらそうかも知れん。取り敢えず採ったかも知れないが、なんだこの下ぶくれのキノコはと思って投げ捨てたのかも。だから小さいのがまだ若干残っていた。そうだ、きっとそうに違いない。（それは自分を無理に納得させているね。憐れな奴）
オイラはそれをまた大事そうに枯れ葉を被せ、また養生しておく事にした。今度も二日後だ。もしまた採られているような事があったら、それこそ「盗人に追銭」をしているような物だ。
それにしても悔しい。ヤイ、採っていった奴。お前は碌な死に方はしねーぞ。もし楽に死のうとしたら、オイラが藁人形に五寸釘をぶっ込んで呪い殺してやるー。（酷い逆恨みだ。）今からでも遅くない。元の通りにしておけば許すとしよう。（ンな事出来る訳無いでしょ。アンタも往生際悪いね）
こうして楽しみにしていたホンシメジ採りは敢えなく、そして突然に終焉を迎えるのだった。ま、世の中こんなものですね。中々自分の思うようには行かない。でも昨年のように偶然見つける事もあるのだから、またそんな事を期待して探し回りましょう。「犬も歩けば棒に当たる」ですからね。
