すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

今後の研究課題

 ウチの親父殿の職業は鉄屑屋だった。私が学生をしている頃はまだリヤカーを引っ張って商いをしていた。オヤジ殿は足が悪く、オフクロは手が悪く身体障害者同士の夫婦だったから、それこそ商売を始めた頃は苦労の連続だったらしい。

 それでも私が高校生になった頃は暮らし向きも幾分か楽になった様で有るが、冬ともなると雪が降るので、リヤカーは使えなくなるし、お客の数もぐっと少なくなる。そんな時のために冬場は解体する物を在庫して仕事を作っておくのだ。例えば鉄屑に付いた銅や砲金、真鍮、アルミと言った非鉄金属を取り外す仕事だ。こう言った仕事は忙しい夏場では中々やってられないから、冬場の方が好都合なのだ。だが真冬の寒い中で行う解体は結構キツイ。なにせ粗末な小屋で石油ストーブ一台でやるのだから・・・・。

 で、解体仕事は割のいい仕事かというとそんな事は無い。腕のいい人は確かに早くて合わせるのかも知れないが、オヤジの場合碌な道具は使わなかったし、第一解体が下手だった。解体道具に金をかけていれば、簡単に能率良くできるのに、貧乏暮らしが長かったオヤジはそんな物に金をかけるのが嫌だったのだ。

 で、解体が上手く行かないと「これは今後の研究課題としよう」とそれをうっちゃって置くのだ。そうするとあれも研究課題、これも研究課題となり、研究課題の山が出来、不良在庫となる。不良在庫など二束三文でたたき売れば良いのだが、ここで昔者(むかしもん)の勿体ない根性が出て捨てられないので有る。研究課題もいいが、それを何時になったら克服するんだ、オヤジ殿?

 これは私が仕事を手伝うようになっても続き、「その非鉄金属が付いた物は俺が解体するから、取って置け」との仰せに従って在庫するのだが、件の如く不良在庫の山が出来てしまうので有る。私はどちらかというと[今日なしえぬ物は明日も出来ん」という考えに近いと思うのだが、勿体ない精神はオヤジと同じだから、この所謂「バラシ物」は沢山在庫した。

 で、仕事を辞める時この在庫品のお陰で結構お金になった。でもあたしゃオヤジ殿のように道具に金をかけないなんて事はしない。積極的に道具を買い、そして使って仕事の能率を上げた。元手をかけるからこそいい仕事が出来るってもんだ。オヤジはどうもそこん所が分かってなかったようで・・・・。

 ともあれこの「今後の研究課題」は実に便利な言葉で、上手く行かなかった時はぜ〜んぶこれで誤魔化せる。考えてみればオヤジは良い言葉を残してくれたなあ。(アホ!)