折角雪が溶けたというのに前日の猛烈な雪降りに遭って本日はまたもや銀世界に逆戻りした。除雪して朝食を取った後、Ｔさん宅へパソコンの納入に行く。リビングに入るとおおっ、薪ストーブが有るではないか。それも私が入れようとしていたヨツール製だ。羨ましい！エエナー、やっぱり薪ストーブは。私はストーブをワサ（かまうこと）したくなるのを必死で堪えて何食わぬ顔でパソコンのセッティングに掛った。だが気はそぞろで薪ストーブが気になってしょうがない。
（嗚呼、Ｔさん、ストーブを俺にワサさしてくんねえかな？オラチの家解体した時、材木分けてやったんだからワサする権利有るよな？）
などと不埒な妄想が頭を擡（もた）げてどうしようもない。パソコンなんぞちょちょらと終わらせて早くそのことを切り出したいのだが、内気で引っ込み思案な（何処が？）私はどうしてもそのことを言い出せない。結局何だかんだで時間は潰れ、Ｔさんが仕事に行く時間となったので止む無く私は帰らなくてはならなくなってしまった。千載一遇のチャンスを逃してしまったのだ。そして帰り道、
（あのパソコン調子悪くならないかなー。そうしたら、「えー、パソコンの修理とついでに薪ストーブ様のご機嫌伺いに参りました。」なんて言えるんだがなあ。）
などとまたもや不埒な考えに至るのであった。
さて我が家の餌がそろそろ尽き掛けてきているので買い出しに出かける。金があるうちに買っておかないとエライ事になりかねない。最近は我が家はモン客（どうでもいい客）が多いのでコーヒーの消費量が増大している。故にコーヒーフィルターの使用枚数も多くなった。今日は忘れずに買う事にしよう。それにしてもこのモン客共は
「遊びに来てやったのにここんちは客にコーヒーも出さねえのか？」
などと手ぶらで来ているのにでかい面して私にお茶を出させる困った奴らなのだ。まあ、久し振りに大量に食料を買込んで来たので当分は困らないだろう。熊のごとく冬眠できる。お昼を食べた後テレビを見る気も起きなかったので久し振りにクラシックでも聴くかと思い、レコード棚をガサる。あ、リパッティのショパン「ワルツ集」か。そう言えばここの所聴いていなかったな。いつも金がネー、金がネーなどと言ってないでたまにはショパンでも聴いて心を清らかにすべえ。等と柄にもなく世俗を離れようとするのであった。う〜ん、ショパン君はやっぱりいいねえ。心が洗われる様だ。（と言う事は元々は心がキッタネー？）リパッテイのピアノの音が一層私を切なくさせる。この夭折したピアニストのショパンは何故か聴く人の心を捕える。
「アー、そこの君、いつもカネ、カネ、カネなんぞと言ってちゃあイカンよ。蜩（ひぐらし）じゃあるまいし。たまにはショパンでも聴き賜え。」
私は聖人になったかの如く悟りを開くのだった。ハイ、お後がよろしい様で・・・・
写真：ディヌ・リパッティ ショパン「ワルツ集」
