秋も深くなってくると夜は静かになる。夏の夜は車やバイクの音、花火の音などで賑やかだが、この時季は虫の音などが聞こえる事はあっても、家の周りは森閑としている。
私が40年程前この地に越してきた時はそれこそ夜にでもなると狐狸の類でも出るんじゃないかと思う程ひっそりとした所だった。時折梟が鳴いているのが聞こえてきたし、実際電線に止まっていたのを見た事がある。それもその筈、家の前はまだ山だったのである。
それから20年後その山は宅地開発され、辺りは様変わりしてしまった。年中夜でも何らかの音は聞こえてくる。しかし今夜は久しぶりに当時の静かな夜が戻ってきたようだ。お陰で落ち着いた夜を過ごす事が出来た。テレビも消しているから、一層静寂感を楽しむ事が出来る。夏の夜は暖かいから人々が戸外で涼を楽しむから、どうしたって様々な音が聞こえてくる。その点寒くなる秋の夜は早く暗くなるのも手伝って家にいる事が多くなるから、人々の声は余り聞こえてこない。
余りに静かなので夜一人で山にいた時のような感覚に襲われた。違いは部屋の中が煌々と明かりに照らされているだけだ。一人読書にいそしむ。そして目が疲れて休みたくなれば、コーヒーを飲みながらクラシック音聴いて疲れを癒やす。。これこそ至福の時間と言うべきだろう。普段慌ただしく生活をしていてついぞ忘れていた大切な時間を取り戻したようだ。
心の満足はお金では換えられない。この夜は久しぶりにそれを再認識させてくれた貴重な夜だった。