昔は井戸の有る家が少なくなかった。かく言う私の伯父さんの家にも井戸があった。冬は水が温かいし、夏は冷たいので西瓜などを良く冷やしていた。また当時は水道の断水が良くあったので、そんな時に井戸は重宝した。
昔の我が家の近くに通称「二つ井戸」と呼ばれる井戸がある。室にまでも健在だが、最近は余り使っている人が無いようだ。嘗てはここが一種の共同洗濯場だった事も有り、近所の女将さん連中のそれこそ文字通りの井戸端会議の場となっていた。しかし今日では洗濯機や冷蔵庫が普及した事もあり、余り井戸は使われなくなったようだ。
こうなると井戸は無用の長物で反って子供が落ちたら危ないと言う事で埋められたりする事が多くなった。折角昔の人が苦労して掘ったのにと思うと些か残念な気がする。近年の井戸は洗濯や飲み水、或いは冷却用と言うより冬の融雪の為に掘られているようだ。まあこれなら昔と違って大きく穴を掘る事は無いので、子供が落ちる危険性は無いが、俳句に詠まれるような昔の情緒は無くなってしまった。
私の叔父の家でも井戸は使われなくなってしまったので埋めてしまった。夏に足や手を洗うひんやりとして気持ち良かったのを思い出す。地球温暖化が言われ始めた頃から夏が段々暑くなってきた。猛暑日になると井戸に冷やした西瓜を美味しく食べた嘗ての記憶が蘇る。釣瓶を手繰って水をくんだのが懐かしい。もう一度あの頃に戻ってみたいこの頃です。
