先日亡くなったＮ君は３０数年来の友人であった。故有って晩年は些かけんか別れをしたような格好になってしまったが、彼とは音楽を通じて色々語り合った。
図らずも彼の遺品を整理するお手伝いをしたが、その中に彼が愛した蓄音機やレコードが有った。お互いにあの頃は音楽に熱くなっていたから、通販で良く同じレコードを買っていたっけ。あの頃は今みたいにネットがなかったから、注文は葉書か、ファックスであった。私の家はまだファックスがなかったから、注文は早い者勝ちのため、良く欲しいレコードを取り逃がしていたね。それも今では懐かしい思い出です。
Ｎ君は私と知り合う前から蓄音機の王者「クレデンザ」を所有していた。彼は甚くＳＰレコードを愛していて、その所有枚数も相当なもので有った。最近は聴いていたのかどうか分からないが、最後まで手放さなかった所を見ると、やはり彼にとってこの蓄音機は命だったのだろう。
今その蓄音機で彼の残したＳＰレコードを聴いていると、何故か胸にこみ上げてくるものがある。様々な行き違いがあったけれど、音楽を愛していたという点では同じだった。
彼の遺品で音楽を聴く事が彼の供養になるのではないかと、毎晩少しずつでも聴こうと思っている。この蓄音機を所有している人も今では珍しくなくなったが、彼ほど愛し、大事にしてきた人はいないのではないか。一時は売る事も考えたが、ＳＰレコードを真剣に聴いてくれる人のところに行くとも限らない。私が彼の思いを継いでやるのが一番良いのかも知れないと思い、当分私が聞く事に決めた。
でも良い音は独り占めにしませんよ。聴きたい方はどうぞ我が家にいらっしゃって下さい。ただしコロナは持ってこないように。（笑）
蓄音機の王者、ビクトローラ「クレデンザ」
