すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

好みと理解力

  私の知人でも有り先輩のHさんに昔「レコードは聴かないんですか?」と訊いた事が有るが、「あ、俺はあのプツプツ出るノイズが嫌だからCDしか聴かない」と言われた事が有る。つまり彼の場合飽くまでも綺麗な音でないと嫌なのだ。LPの力感がどうの、腰の入った音がどうのという事には全く関心が無い。所謂これは「価値観の相違」なのか?

 

 私も昔CDが発売される前は今度は針を使わなくてレーザーでトレースするからパチパチとかの針ノイズは一切聞こえないと言う事を聞いていたので心待ちにしていた。私も出来れば針ノイズなどは聞こえない方がいいと思ったし、扱いも簡単そうだから本当に期待していた。

 

 ところが発売になってその音を聞いてみるとがっかりした。確かに針ノイズは聞こえないが肝心の音が軽くて中身スカスカに聞こえる。これが待ちに待ったCDの音かと酷くがっかりした物で有る。以来CDは聞き流す物と決めているのでメインの音楽媒体になり得てない。

 

 CDは音楽を十分に聴かせてくれていないと判断したからで有る。私の場合針ノイズや取り扱いの簡便さよりも音の質を求めたのである。第一CDは発売当初一枚当たり3000~3500円とべらぼうに高かったので「こんな音の悪い物に3,500円も出す人の気が知れない」と思った物で有る。

 

 時は流れてCDの値は暴落し、LPの価値は最近見直されてきた。そもそもCDの発売は音質云々よりLPより製造コストが掛からないから、要するに儲かるからレコード業界がそれに乗ったのである。そして音質がLPに及ばないからSACDなんたらと言う物をまた作らなければならなくなってしまったのである。まあ、これを出してまた一儲けという意味もあるが。(笑)

 

 少し話がずれたが、私の先輩の場合はとにかく「綺麗な音」が欲しかったのだろう。しかし果たしてLPの音の良さを真に理解していたかは疑問が残るのだ。彼がLPの良さを理解していた上でCDを選択するなら確かにそれは「価値観の相違」なのだが、そうでなければ単に音に対する理解力が無いだけなのだ。

 

 何故私達SPレコード愛好者が未だに前世紀の遺物のようなSP盤を聴くかと言えば、それはSP盤でしか出ない音が有るからだ。まあ、私はSP盤をメインの媒体にしていないから真の愛好者で無いかも知れないが、それでもその価値は大いに認めている。

 

 私と同じ町内に住む出入り業者のセーさん。彼は私と同い年のオーディオマニアだが、私の家で何度かSP盤を聴かせた事がある。しかし彼は何の反応も示さなかった。ただ古い昔のレコードから音が出ている程度にしか思わなかったのだろう。そもそも彼も昔はレコードを聴いていたのであるが、オーディオを復活するに当たり、彼もLPではなくCDを選択した。多分私の先輩と同じ理由からだろう。

 

 しかしその時彼は本当に音の良いのはLPの方だと思っていなかったのではないか。恐らくアナログレコードを本当に良い音で鳴っているのを聴いた事が無かったに違いない。そして以来CDが彼のメインの媒体となっているから雑音の嵐であるSP盤など論外である。

 

 無論私はSP盤の良さが分からない人にSP盤なんぞ勧めない。彼が我が家に来てもその後ほとんどSP盤はかけない。その彼がある所でLPとCDで同じ盤をかけて貰って漸くLPの方が音が良いのだと認めた経緯がある。しかしその時はもう彼はCDだけで何千枚と所有していたので今更後には戻れないと言っていた。

 

 しかし私に言わせれば本当に彼はその時LPの音の良さを理解したのか怪しいと思っている。恐らく確かにちょっとLPの方がいいようだが、LPを聴くにまたそれなりのレコード・プレイヤーがいるし、現行の使っているアンプはイコライザー・アンプが入ってないのでそれもまた必要となるので金も掛かるし、面倒くさいと思ったのだろう。

 

 だが本当に音を追求する者で有ればここで方向転換をする。それをしなかったのはその音の差を「それほどでもない」と感じていたからでは無いだろうか。理解力が無いのを好みの違い、価値観の相違と片付けた方が己の無知をさらけださずに済む。

 

 今から考えると若かりし頃のうちの音はかなり酷かったと思う。それを自分では「かなりいい音」と思っていた。他人様にいい音を聴かせて戴いてもその差があまりにあるとどれほどいい音か分からない。やはり自分の出す音が少しずつ向上するにつれ耳も成長するのである。

 

 自分の耳が悪いのを好みの違い、価値観の相違などと単純に言って貰いたくは無い。その人が色んな音を経験してきて、「うん、この音もいいけど、俺は自分ちの音が好きだ」と言うのなら話は別だが。とにかく音は目に見える物でないし、100mレースのように先に到着した者が1位となる訳でも無い。ただ多くの方が「いい音」と認めるのはやはりいい音なのだろう。くれぐれも独りよがりにはならぬようにしたいものだ。