昨年家を壊す際に見つけた物に靴の形をした貯金箱がある。陶製だが割れてなかったので大事にとっておき新築後に持ってきた。だがこの貯金箱、いつごろ買ったのか、それとも貰ったものなのか皆目見当がつかない。貰った物なら貯金箱なのだから当然中学生か小学生の頃だろう。こう言っては何だが私は幼い時しっかりと貯金をしていた。毎日もらうお小遣いは僅か五円である。それを使わずに貯金をしておき、貯まったら母親にパーマをかけてあげたのである。（おお、なんと親孝行な息子だろう！）多分私は母親の喜ぶ顔見たさに貯金をしたのであろう。またこんな事もあった。招き猫型の陶製の貯金箱に例によって私は貯金をしていたのであるが、８歳年上の兄の悪魔の囁きによってその貯金箱を壊しアイスクリームを奢らされる羽目に陥ったのである。（兄は食い意地が張っていた。）また竹筒を利用した貯金箱の場合、兄はハガキをすぼめてお金の入れ口に差し込み上手く硬貨をその上に滑らせて抜き取っていた。（これはいくら兄弟とは言え窃盗罪にあたる。ケシカラン！）かように兄は悪知恵が発達していたのである。以来段々と私は貯金する意欲がなくなり今日に至っている。私のWEBネームが〝すかんぴん″なのもうなずけよう。
さて件の靴型の貯金箱であるが振ってみると全然音がしない。つまり１銭も入っていないのである。考えてみればたしかにこの貯金箱に金を入れた覚えはない。これはいけない。せっかくの貯金箱を飾って置くだけでは。しかし私は只今プータローでとても貯金なんぞする余裕はない。おお、そうだ、いいことを思いついた。テーブルの上にさりげなく置いといて、我が家に遊びに来る慈悲深い方々から浄財を入れてもらうことにしよう。メデタシ、メデタシ。
写真：靴型の貯金箱
