すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

冬山遭難

 中央アルプス木曽駒ヶ岳に登っていた山梨県の29歳男性が8日午前遺体で発見された。前日に停滞で救助の要請をし、雪洞を掘って避難していたとのことだったが、無くなったのは残念だった。

 

 木曽駒ヶ岳は嘗て私も登ったことが有る山だけに、このニュースを聞いた時、生きて帰ってとの思いを強くした。駒ヶ岳千畳敷の中間の中岳の山頂付近で倒れていたとのことだが、今更ながら冬山の怖さと厳しさを味わった。

 

 冬山へ挑戦するからにはそれなりの装備と技術は有ったのだと思うが、にもかかわらず遭難したのは自然は甘くないと言うことだろう。この千畳敷カールは紅葉の名所でロープウェイが付けられていることから、多くの観光客が訪れる。しかし秋と冬は全然様相が異なる。

 

 それはこの千畳敷カールは冬から早春にかけては雪崩の巣で有るという事だ。私も登ったことが有るから分かるが、カールから底を登り切った乗越浄土と呼ばれる平地まではかなりの勾配で、しかも左手は宝剣岳が聳えているから、その急斜面から雪崩が起きやすいのである。

 

千畳敷カールから上の乗越浄土へ向かう。下に見えるのはロープウェイ駅も兼ねている千畳敷ホテル。

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 ここを突破して木曽駒ヶ岳への道は中岳へ登る所以外は概ね平坦で、夏道ならば特段の危険も無いが、冬となればそうは行かない。吹雪いていればたちまちホワイトアウトになり、何処を歩いているのかさえ分からない。またこう言った場所は風もかなり強くなるし、落雷の危険性も高まる。決して侮ってはならないのだ。

 

中岳から宝剣岳を臨む。下に見える山小屋は宝剣・天狗山荘。

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 とは言え、逆に時折垣間見せてくれる冬山の風景は息を飲む程美しい。あたかもローレライの歌う声の様に魅せられ、それをまた味わいたくて訪れるのだろう。実際この木曽駒や宝剣の周りの風景は素晴らしい。北アルプスや、中央アルプスの山々、更には富士山までもが遠望出来る。雪を被った周囲の山々、青空と踏み跡の無い、純白の雪原、更には風が作り出したシュカプラ(雪紋)。それらを一瞬でも見たら、もう冬山の虜となってしまう。

 

中岳から木曽駒ヶ岳へ向かう道。こんな所でホワイトアウトになったら、どうしようもない。磁石やGPSだけが頼りだ。山形の蔵王山ではガスに包まれた時に道を見失わないように、道の両側に木柱が立てられていたが、ここでも何らかの対策が欲しいものだ。

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 良く言われる事だが、何を好んでそんな危険な所へ行くのかと思う人は少なくない。しかしそれは俗界の汚れを落とし、清々しい心持ちに冬山がさせてくれるからでは無いか。そして何よりも達成感も得られる。しかし、それも無事に帰っての話だ。幾らどんなに気持ちの充実感が得られても、死んでは元も子もない。

 

 とは言え、美しい魔女の微笑みに魅せられた彼らの気持ちも、山をやる者としては分からないではない。私にも知識、体力、技術が今有れば、ひょっとして挑戦したかも知れないからだ。幸いにしてと言うべきか、今の私には何れも無いから、あ、そうそう金も無いから(またそれか)、魔女は私には微笑んでくれそうに無い。(笑)

 

 亡くなられた方のご冥福を祈ると共に、改めて自然の厳しさを思い知らされました。