すかんぴんのブログ「今日もヒマだぁ~」

暇を持て余して、お山、お絵かき、蕎麦打ち、山菜採り、キノコ採り、音楽鑑賞、オーディオ、パソコンと、あれこれ手を出し、もがいているジジイのページです。

裏浜

 正しくは浦浜なのかも知れないが、家並みが立ち並ぶ裏の浜という事でそう呼ばれたのだろう。子供の頃よく遊んだ鵜川と言う地元の2級河川の河口に広がるちょっとした砂丘が有った。結構砂浜は広く、夏など砂が焼けている時、裸足ではとても波打ち際まで歩いて行けない程の距離が有った。

 

 ここは子供達にとって良い遊び場で、お天気でさえあれば放課後必ずと言っていい程子供達の遊んでいる姿が見かけられた。斯く言う私も学校から帰るとランドセルを放り出して、すぐさまこの浜に駆けつける事が少なくなかった。

 

 三角ベースボール、凧揚げ、ビー玉遊び、魚釣り。何をするにも格好の場所で、小高い砂丘のてっぺんで仰向けになって寝転んでのんびり空を見上げているのも好きだった。今考えるとあの頃が一番楽しかったような気がする。

 

 しかしそんな子供の楽園はある事業がこの砂浜で行われる事によって永久に無くなってしまう。それは帝国石油がこの地で石油掘削を始めたからだ。当然その場所は立ち入り禁止となり、子供達はそこで遊べなくなってしまう。この時程この事業を恨めしく思った事は無い。

 

 そんな子供達の呪い?が効いたのか、石油掘削は失敗に終わる。しかしこの工事によってめちゃめちゃに荒らされた砂浜は元に戻る事は無かった。あの砂丘に寝転がってぼんやりと空を見つめていた楽しい日々は二度と帰らなかった。

 

 やがて海浜工事が進み、海岸道路が建設されるに及び、完全に砂浜は無くなった。鵜川河口に橋が架かり、対岸へ渡るのに随分便利になったけれど、この海岸道路沿いにはテトラポッドなどが置かれたりして、もはや昔日の面影は無い。帰れるものならもう一度あの裏浜に帰ってみたい。昭和の懐かしき日々は遠く記憶の片隅に留まっているのみだ。