嘗てはあれ程のブームだったオーディオが廃れ、今では滅多にオーディオ店を見かけなくなってしまった。昔は何処の電器屋さんにもオーディオコーナーがあって、私なんぞは閑が出来ると時間潰しに必ず一回りして歩いたものだ。
大体あの頃は男の子は高校へ入学すると決まってシステム・コンポーネントを買って貰ったから、私の時とエライ違いだった。私の頃は腕時計と相場が決まっていたがそれでも嬉しかった物だ。尤もボロ長屋に住んでいてシスコンも無い物だが。(笑)
あそこのお店には珍しいスピーカーが置いてあると聞けば一目散に飛んでいって聴いたものだ。しかし聴いていいと思ってもおいそれとは手が出さない物ばかりだったが。(笑) やがて市内のオーディオ店だけでは飽き足らず市外のお店にまで足を伸ばすようになる。こうなるとだいぶ病気の度合いが進んでいます。(笑)
こちらより都会の市にはやはり大きいオーディオ店があって相当高級なコンポが置いてある。写真でしか見た事の無い機器を聴かせて貰えるのだから、こんなに有り難い話は無い。段々店員さんと話をしているうちに欲しくなってくるのだが、何せ先立つ物が無いから指を咥えて見ているだけだから悲しい。(笑)
大きい老舗のお店はスピーカーなんかもフロア型の大型のものを取りそろえている。当時の私にはとても購入なんて思いも付かなかったが、いつの間にかそんなスピーカーを今じゃ自宅に置いているのだから分からないものだ。
まあ、とにかく買えなくても音を聴いているだけで楽しかったものだ。大体こう言う物は手に入れるまでが楽しいので有る。手に入れたらああして、こうしてさぞイイ音で聴けるだろうと想像するのが楽しいのだ。
そうして手に入れるといつの間にか飽きてしまってと言うか、もっと上の機種のイイ音に憧れて、今度はそちらをホスイ、ホスイとなってしまうのである。(笑） とにかくオーディオ店巡りをしてはそんな事ばかりやっていたのが今では懐かしい思い出である。
しかしもう完全に音楽文化が廃れた今はオーディオ店の復活はあり得ないだろう。私達は良い時代を過ごしたなとしみじみと思うのである。せめてオーディオ店を見つけたら入ってみてあの頃の思いに戻ってみたい物だ。
